SIからの脱却?サービス化の意義とは

はじめに

少子化による人材不足や働き方改革による残業の低減、顧客のIT投資節約など複数の要因が重なって、SI業界は収入源を人月商売以外で模索しています。

少々過激なタイトルですが、次の記事にてSIの問題が挙げられています。

課題山積のSIビジネスはやがて崩壊し、SIerに将来はない。

  • IT分野の低コスト化が求められるようになったこと
  • クラウドで提供される業務システムが増え、受託SIへの需要が減ったこと
  • SIerの人材が不足し始めていること
  • 求められる技術レベルが高くなっていること
  • IT分野の低コスト化が求められるようになったこと

これは実感があります。 特にメーカー系SIer十八番であるハードが売れなくなっているのは数字に出ています。 また、SaaSなどのサービス利用によってコストを下げようとする動きがある一方で、データサイエンスなどはコア業務と位置づけ、内製化する動きが見られます。

  • クラウドで提供される業務システムが増え、受託SIへの需要が減ったこと

これは微妙な感じです。 SaaSなどのサービス利用は増えているものの、ノウハウが無いためサービス導入を受託したり、カスタマイズで個別SIが入るというのはまだまだある印象です。

  • SIerの人材が不足し始めていること
  • 求められる技術レベルが高くなっていること

これは実感があります。 IoTやFintech、ブロックチェーンなど様々な技術が生まれ受注のチャンスである一方、必要な技術が細分化され、スキルがマッチする人材を確保することが難しくなっています。外注頼りのSIerは専門技術を持っている要員を抱え込んで確保してるところもあるでしょう。

こういった事態を打開すべく、SIを脱却し、サービスに転換する企業も見られます。

SIがサービスになることで、ユーザーは必要なときに必要な物を、使う分だけの費用で利用できるという恩恵を受けられます。

この記事では、SIと比較して、サービスがどのようなメリットを持つのか考えてみたいと思います。 技術視点ではいくらでも違いがあると思いますが、今回はサービスを提供する側のビジネス、経営視点で考えてみたいと思います。 MECEを意識せず、ブレスト的に列挙したいと思います。

定義

  • SI 顧客の企業課題を受託のITシステム開発で解決すること。

  • サービス 提供側でリソースを持ち、顧客には利用権を与えて価値を提供すること。

サービスのメリット

技術を非公開にできる

SIだとソースコードも納品することが多く、ノウハウが他社に盗まれてしまう恐れがありました。一方でサービスだと、ソースコードは公開しませんので、技術を秘匿することができます。 同様に運用報告もありませんので、効率的な運用のノウハウを盗まれることもありません。

価格を原価でなく価値に付けられる

SIではハードやソフト、人件費全て明細で確認されてしまいます。顧客の情報部門に目利きがいると、原価を推定され値下げを要求されてしまうことがあります。 サービスでは原価の構成を開示しませんので、原価をもとにした価格交渉をされにくいです。

大量展開でコストメリット

SIの場合、顧客ごとに資材や人を調達するので、それぞれ製造原価がかかります。 サービスの場合は、リソースを自社持ちにするため、異なる顧客に対して同じ基盤を使用でき、コスト低減を図ることができます。

標準化によるコストメリット

サービスでは全ての顧客に共通の基盤で対応するため、使用する技術を揃えることができます。これにより人材の確保や教育のコストが下がります。

固定収入が得られる

SIは毎回受注競争がありますが、サービスは一度導入してしまえば、継続して収入が得られます。 乗り換えにもコストが発生しますし、顧客の予算確保は年単位なので、予算検討時期に乗り換えられないようにアピールさえすれば何とか継続収入を得ることができます。

運用ノウハウが溜まるし、活かせる

同一のサービスを同一の運用部署で運用するため、ノウハウを一ヶ所で管理でき、しかもきちんと活かすことができます。SIのようにノウハウが別システムでは役に立たないものになるということはありません。

サービスのデメリット

必ず顧客が付くわけではない

サービスは受託ではなく、開発、すなわち投資案件になります。売れるか確定しないものを作るのにはリスクがあります。

値上げが難しい

SIの場合、一個一個案件が独立しているので請求費を変えることができます。 サービスの場合、顧客ごとに価格を変えたり、継続利用しているところに途中で価格を変更したりするのが難しいです。 エンハンスも追加で料金をとるのではなく、今まで儲けた分で、となりやすいです。

SIよりも安くしないと売れない

顧客側がSIに対して慣れていると、サービスの中身をSIで実現したときの費用を見積もられます。SIと比較してサービスの方が高くつく場合、うまく説明出来ないと結局SIにしてくれと言われてしまいます。

価格決めが難しい

サービスでは価値に価格がつきますが、前例の無いサービスの場合、提供側も買う側も価格の妥当性を判断できません。保守的な顧客だと、価格が妥当だとわかるまで、導入を控えられる場合があります。

何に従量課金するのかメニュー整備が難しい

単純に月額なのか、通信量なのか、使用回数なのか、値付けの方法がたくさんあり、検討に時間がかかります。 (こういう所こそ理系院卒の数理知識の使いどころだと思うんですが、経営者には認知されていないようです)

顧客規模の格差を吸収するのが難しい

使用量が多い顧客と少ない顧客で課金が同じで良いのか、という問題があります。

廃止ができない

儲からない場合はサービス廃止も必要なのですが、利用者がいる限り撤退が難しいです。 撤退する場合は、類似サービスの紹介といった保証が必要になる場合があります。

カスタマイズが難しい

個別にカスタマイズすると、コストメリットが受けづらくなります。しかし、顧客によっては業務プロセスを変えることが出来ないため、カスタマイズは必須という場合があり、その場合は失注になります。

顧客の競合が顧客にならない場合がある

サービスの内容によりますが、提供物が顧客の差別化戦略の対象になっている場合、競合と同じものを使わない、ということになり、業界全体を囲めない場合があります。

料金固定のため入札対応が難しい

公共の顧客の場合、受注は入札になりますが、価格競争となった場合、サービス価格を変えることが難しいです。 また、利用料が変動するため、公共のように予算がガチガチに決まっている場合は利用料が読めず、導入を見送る場合があります。

サービス化すると良いもの

まとめると、「顧客それぞれが持っていた共通のリソースを提供側で集約でき、かつ運用において独自のノウハウや技術があるため、それらを極端に効率化できるもの」または「業界や規制で手順が決まっており、各社共通になっている業務のプラットフォーム」はサービス化するとうまく行きそうです。

AWSはサーバリソースを集約し、独自の技術で運用することで効率化しています。

TWX-21 Web-EDI/BBサービス業界標準のデータ交換手順を実装したプラットフォームです。

GCP業務支援システム tsClinical DDworks21は治験の実施計画立案から終了手続きまでサポートするシステムで、治験はGCP省令によって厳しく手順が決められています。

米国のSaaSはもともと業務プロセス特化のソフトウェアを単純にSaaS化したものが多い印象です。(会計ソフトやワークフローシステムなど) https://www.americabu.com/saas

一方でMicrosoft OfficeAdobeサブスクリプションモデルを導入していますが、上記のようなメリットがないように思えます。 これはベンダのメリットというより、ユーザのメリットの影響が大きいからです。メリットがあるから、というよりはやらないとデメリットになるからという状態になっているのだと思います。

BPO1までやるか

サービス化の本質は自己リソースを効率的に運用して利幅を稼ぐことなので、時にはリソースを自社で抱えることが必要になります。

例えば、プラットフォーム的な事業をしている企業を買収し、IT技術で運用を効率化したり、共通業務に特化した合弁会社を設立するなどです。 特に、最近流行のAIや機械学習はコスト削減に強いため、AIシステムは外販するよりも、内部で使った方が良いと思います。

一方で、リソースを抱えるということは在庫リスクが生じるということなので、効率化によほどの自信があるか、体力のある大企業でしか、事実上は不可能でしょう。

あえてSI

無理にサービス化するのではなく、ソリューション事例をメニュー化し、カスタマイズパターンをある程度用意することで導入スピードを早く、コストを低減する方法もあります。 毎回御用聞きをするのではなく、ある程度形になっているものから選ぶという手法です。

これに取り組んでいるのが日立製作所で、過去の事例をLumadaユースケースとして用意しています。

Lumadaとは

日立では、多岐にわたる業種・業務のノウハウや知見を、さまざまな分野のお客さまとの協創で迅速に活用するために、Lumadaのユースケースとして凝縮・蓄積しています。 Lumadaユースケースとは、お客さまと協創で新たな価値の創出を実現したデジタルソリューションをモデル化したものです。それぞれの>ユースケースには、データからどのように価値を創り出したのか、人工知能やアナリティクスなどにどのような技術を適用したのか、といった要素が整理されています。

おわりに

この記事ではサービスのメリット、デメリットについて列挙しました。 サービスはデメリットはあるものの、本質的に無駄を削減するものでもあるので、これからはどんどんサービスに転換していくのではないでしょうか。

おまけ

記事とは全く関係ないですが、面白かったものをここに残しておきます。

大手SIerの役割とは http://blogs.itmedia.co.jp/noubiz/2013/09/sier.html

富士通株式会社 国内SIビジネスの強みと展望について http://www.irwebcasting.com/20180709/1/082b64521f/mov/main/index.html


  1. ビジネス・プロセス・アウトソーシング https://ja.m.wikipedia.org/wiki/ビジネス・プロセス・アウトソーシング