発信力道場

がんばって日記書きます

リーマン面に対する測度

(5.4.7)以降の解説をする。
この節はゴースト場b_{ab}の挿入が経路積分の計算でどのように計算されるかを説明している節である。(5.4.7)の前の式までは、モジュライは計量に押し付けられていたが、それを推移関数に押し付けることで計算を進めている。
まずBeltrami微分を定義する。

\begin{align}
\mu_{ka}^{ \ \ \ \ \ b} = \frac{1}{2}\hat g^{bc}\partial_k \hat g_{ac}
\end{align}
これはゴースト場b_{ab}の挿入を少し変形したものである。

\begin{align}
\frac{1}{2\pi}(b,\mu_k)=&\frac{1}{2\pi}\int d^2 \sigma \sqrt {\hat g} b^a_{\ \ \ b} \mu_{ka}^{ \ \ \ \ \ b} \\
=&\frac{1}{2\pi}\int d^2 \sigma \sqrt{\hat g} b^a_{\ \ \ b} \frac{1}{2}\hat g^{bc}\partial_k \hat g_{ac} \\
=&\frac{1}{4\pi}\int d^2 \sigma \sqrt{\hat g} b^{ac}\partial_k \hat g_{ac}\\
=&\frac{1}{4\pi}(b,\partial_k \hat g)
\end{align}
具体的に成分で書くと次のようになる。

\begin{align}
\frac{1}{2\pi}(b,\mu_k)=&\frac{1}{2\pi}\int d^2 \sigma \sqrt {\hat g}(b^z_{ \ \ \ \bar z}\mu_{kz}^{\ \ \ \bar z}+b^{\bar z}_{ \ \ \ z}\mu_{k\bar z}^{\ \ \ \  z})\\
=&\frac{1}{2\pi}\int dzd\bar z (b_{\bar z\bar z}\mu_{kz}^{\ \ \ \bar z}+b_{z z}\mu_{k\bar z}^{\ \ \ \  z})
\end{align}
ここでd^2\sigma=dzd\bar z,\hat g_{ab}=1/2 \delta_{ab}を用いた。b_{ab}は対称テンソルであることに注意。

さて、世界面上のm番目のパッチに注目しよう。今このパッチは座標 z,\bar zで張られているとする。モジュライ$t^k$を変化させると世界面の形が変形される。変形前のm番目のパッチ z,\bar zと変形後のm番目のパッチの座標 z',\bar z'が次のような関係にあるとする。

\begin{align}
z'=z+\delta t^k v_{k}^z(z,\bar z),\quad \bar z'=\bar z+\delta t^k v_{k}^{\bar z}(z,\bar z)
\end{align}
この変化に対し計量は次のように変化する。

\begin{align}
ds^2 =& dz'd\bar z'\\
=&\frac{\partial z'}{\partial x^a}\frac{\partial \bar z'}{\partial x^b}dx^a dx^b \\
=&\Big(1+\delta t^k (\partial v_k^z + \bar \partial v_k^{\bar z})\Big)dzd\bar z+\delta t^k(\partial v_k^{\bar z}dzdz + \bar\partial v_k^{z}d\bar z d\bar z)
\end{align}
ここでdzd\bar zの変化分\delta t^k (\partial v_k^z + \bar \partial v_k^{\bar z})は正則座標変換に相当するので、モジュライの本質ではなく、モジュライの変化によって生じる座標のずれと解釈される。重要なのは対角成分の変化で、これは正則座標変換に含まれないので真のモジュライの変化分である。

Beltrami微分の定義と比べると次の方程式が得られる。

\begin{align}
\mu_{k z}^{\ \ \ \  \bar z}=\frac{1}{2}\hat g^{zz}\partial_k \hat g_{zz} = \partial_k\hat g_{zz} = \partial v_k^{\bar z}
\end{align}
反正則の成分も同様である。これを用いるとb_{ab}の挿入は次のようになる。

\begin{align}
&\frac{1}{2\pi}\int dzd\bar z (b_{\bar z\bar z}\mu_{kz}^{\ \ \ \bar z}+b_{z z}\mu_{k\bar z}^{\ \ \ \  z}) \\
=&\frac{1}{2\pi}\int dzd\bar z (b_{\bar z\bar z}\partial v_k^{\bar z}+b_{z z}\bar \partial v_k^{ z})\\
=&\frac{1}{2\pi}\int dzd\bar z \Big(\partial(b_{\bar z\bar z} v_k^{\bar z})+\bar \partial(b_{z z} v_k^{ z})\Big)+(\mathrm{EOM}\times v)\\
\end{align}
最後にイコールは部分積分をした。末項の量はEOMに比例しており、経路積分するとゼロになる量なので考えなくてよい。
複素グリーンの定理を用いて

\begin{align}
=&\frac{i}{2\pi}\int_{C_m}b_{\bar z\bar z} v_k^{\bar z}d\bar z-b_{z z} v_k^{ z}dz
\end{align}
を得る。今はm番目のパッチの上のみで考えたが、本来はすべてのパッチで積分をするので次のようになる。

\begin{align}
\label{allpatch}
\frac{1}{2\pi}(b,\mu_k)=\frac{i}{2\pi}\sum_m\int_{C_m}b_{\bar z_m\bar z_m} v_{mk}^{\bar z_m}d\bar z_m-b_{z_m z_m} v_{mk}^{ z_m}dz_m
\end{align}

次に、v_k^{ z}を具体的にして計算をできるようにしたい。そこで隣接するパッチの間の関係に着目する。m番目のパッチとn番目のパッチが共通部分を持つとする。
m番目のパッチとn番目のパッチの推移関数が次のように与えられたとする。

\begin{align}
z_m = z_m(z_n)
\end{align}
モジュライを変化させるとm番目のパッチとn番目のパッチのそれぞれが変化するから次のようになる。

\begin{align}
v_{mk}^{z_m} = \frac{dz_m}{dt^k} =&  \frac{\partial z_m}{\partial t^k}\Big|_{z_n}+ \frac{d z_n}{d t^k}\frac{\partial z_m}{\partial z_n}\Big|_{t^k} \\
=&\frac{\partial z_m}{\partial t^k}\Big|_{z_n}+ v_{nk}^{z_n}\frac{\partial z_m}{\partial z_n}\Big|_{t^k} \\
=&\frac{\partial z_m}{\partial t^k}\Big|_{z_n}+ v_{nk}^{z_m}\Big|_{t^k} 
\end{align}
最後のイコールについてだが、t^kを止めての微分なのでただの正則座標変換になるので、ベクトルの正則座標変換側

\begin{align}
 v_{nk}^{z_n}\frac{\partial z_m}{\partial z_n}\Big|_{t^k} =  v_{nk}^{z_m}
\end{align}
になる。

(\ref{allpatch})m番目のパッチとn番目のパッチについて考える。

\begin{align}
\frac{1}{2\pi}(b,\mu_k) =& \frac{i}{2\pi}\int_{C_m}b_{\bar z_m\bar z_m} v_{mk}^{\bar z_m}d\bar z_m-b_{z_m z_m} v_{mk}^{ z_m}dz_m \\
& -\frac{i}{2\pi}\int_{\bar C_n}b_{\bar z_n\bar z_n} v_{nk}^{\bar z_n}d\bar z_n-b_{z_n z_n} v_{nk}^{ z_n}dz_n
\end{align}
ここで\bar C_nは経路C_nの経路の時計回りの方向の経路である。経路\bar C_nC_mが一致することを見よう。

f:id:ground0state:20161120182058p:plain:w150

上図を見てもらいたい。mパッチは外側には無限に広がっていると思ってほしい。これは例えばS^2を北極側と南極側の2枚のパッチで囲んだ状況に相当する。nパッチの境界の経路C_nは反時計回りである。一方で青い領域の境界の経路は時計回りである(S^2だということを考えてもらうとこれを理解できる)。したがって経路\bar C_nC_mは一致する。
具体例を見たが、ほかの状況についても同じことが成り立つ。したがって

\begin{align}
\frac{1}{2\pi}(b,\mu_k) =& \frac{i}{2\pi}\int_{C_{mn}}b_{\bar z_m\bar z_m} (v_{mk}^{\bar z_m}-v_{nk}^{\bar z_m})d\bar z_m-b_{z_m z_m} (v_{mk}^{ z_m}- v_{nk}^{ z_m})dz_m 
\end{align}
となる。ここでnパッチの積分は、座標変換して積分変数をmパッチに変えた。以上すべて合わせると次のようになる。

\begin{align}
\frac{1}{2\pi}(b,\mu_k)=\frac{i}{2\pi}\sum_{(mn)}\int_{C_{mn}}b_{\bar z_m\bar z_m} \frac{\partial \bar z_m}{\partial t^k}\Big|_{z_n}d\bar z_m-b_{z_m z_m} \frac{\partial  z_m}{\partial t^k}\Big|_{z_n}dz_m
\end{align}
これで(5.4.15)が得られた。

最後に(5.4.18)を得る計算をここにメモしておく。
モジュライはx_v,\bar z_vの二つである。したがってb_{ab}の挿入は

\begin{align}
\frac{1}{2\pi}(b,\mu_1)\frac{1}{2\pi}(b,\mu_2)
\end{align}
のように二つの積になる。モジュライによる微分

\begin{align}
\frac{\partial z'}{\partial z_v}\Big|_z=-1,\quad\frac{\partial z'}{\partial \bar z_v}\Big|_z=0,\quad\frac{\partial \bar z'}{\partial z_v}\Big|_z=0,\quad\frac{\partial \bar z'}{\partial\bar  z_v}\Big|_z=-1
\end{align}
なのでこれを代入して(5.4.18)を得る。