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徒然なるままにQM

ただのメモ帳

量子力学の数学

物理

最近になって量子力学の数学について真剣に考えることができたのでここにメモしたい。

可分でも何故ベクトルが非可算無限 作れるのか?(EMANの数式掲示板)

リンク先でもあるように、量子力学の数学というのは非常にややこしい。

というのもフォンノイマンが厳密にヒルベルト空間で定義した手法とディラックが楽観的に定義したヒルベルト空間+アルファの手法があるからである。この二つをごっちゃにしていると、量子力学の数学はなんだかよくわからない体系に見えてめちゃくちゃになるのである。

ここでは二つの手法の違いについて簡単にメモしたい。

 

フォンノイマン流の手法では量子力学の「状態」というのは可分なヒルベルト空間の部分空間で、ノルムが1に規格化されていて位相$e^{i\theta}$の同値関係$|{\psi}>\sim e^{i\theta}|{\psi}>$を入れたもので表される。

ここで、L2ノルムが入った無限次元ヒルベルト空間での可分とは可算無限基底を持つことと同値である。

計算は可分なヒルベルト空間上で行い最後に規格化するといった過程をとることが多い。

例えばスピン1/2はヒルベルト空間はエルミート内積の入った$\mathbb C^2$であるが、状態はノルムが1で全体の位相を無視するので、$(\alpha , \beta)^t\in \mathbb{C^2}$に対し、$(\alpha , \beta)\sim e^{i\theta} (\alpha , \beta)$かつ$|\alpha|^2+|\beta|^2=1$の条件が付く。一つ目の条件で$\alpha$を実にとることができ、さらに二つ目の条件で$Re(\alpha)^2+|\beta|^2=1$まで落ちる。よって状態空間は$S^2$になる。例えば$(0,0)$はヒルベルト空間の元ではあるが、状態空間の元ではないので物理的状態ではない。

 

フォンノイマン流とディラック流の大きな違いは連続固有値を持つ演算子に対する扱いである。

ディラック流の手法に存在する位置固有状態$|x>$はノルムが無限大なのでヒルベルト空間の元ではない。したがってフォンノイマン流の手法では$|x>$は登場できないし、これを固有ベクトルにもつエルミート演算子も存在しない。ただし、エルミート演算子はスペクトル分解という手法で次のようにあらわされる。

$\hat A = \int dE(\lambda) \lambda$

ここで$E(\lambda)$は固有値$\lambda$以下の固有状態への射影作用素である。演算子有界でなくてもよい。

 

ここで次のことを考えたい。フォンノイマン流で考える。

任意の状態は可算無限基底で展開できる。

$|\psi> = \sum_{n=0}^\infty a_n |n>$

 例えば$|n>$は調和振動子の固有状態と考えればよい。ここでL2ノルムの意味では$n$は$a_\infty$が非ゼロでも収束する(ベクトル空間の開集合位相の意味では収束しない)。一方でフーリエ展開を考えてみる。

$\psi(x) = \int_{-\infty}^\infty dp \tilde \psi(p) e^{ipx}$

と書ける。これはL2上のフーリエ展開なのでフォンノイマン流でも正当化される。ディラック流のブラケットで書けば

$<x|\psi> = \int_{-\infty}^\infty dp \tilde \psi(p) <x|p> $

 つまり

$|\psi> = \int_{-\infty}^\infty dp \tilde \psi(p) |p> $

 となる。これは一見ヒルベルト空間内に存在しない無限可算基底による展開のようにも思える。どうしてフォンノイマン流の状態に$|p>$が現れたのか?式をよく見てほしい。フォンノイマン流のヒルベルト空間には$|p>$は存在できない。しかしL2の関数を持ってきて重みづけした積分ヒルベルト空間の元になるのである。

したがってディラック流の状態$|x>$などはフォンノイマン流では積分でのみwell-definedな状態となる。

積分を用いなくても$|x>$を認めるのがディラック流である。ディラック流では規格化のためにデルタ関数を用いるなど、超関数の導入が必須となる。