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徒然なるままにQM

ただのメモ帳

一般化された熱力学第二法則

物理

ブラックホール熱力学における第二法則は面積増大側のことを指す。

 

ブラックホールの外側は場の時間発展がよく定義されているとする。面積増大側とは、アインシュタイン方程式が満たされていて、物質(宇宙項含む)がヌルエネルギー条件を満たしているならば、ブラックホールのホライズンの面積は減少しない、というものである。(Wald:Th 12.2.6)

 

ヌルエネルギー条件は大雑把には負エネルギーが存在しないことを言うので、古典的にはこれは満たされているだろうと考える。するとブラックホールのホライズンの面積が単調増加になるのである。これが熱力学の第二法則に相当する。ホライズンの面積はエントロピーを表していることになる。

 

量子力学を考えると負のエネルギーというものが生じるので前提が破れる。ブラックホールからホーキング輻射が出てきてホライズンの面積は減少する。

 

そこでブラックホールホライズンの面積のエントロピーとホーキング輻射の熱力学的エントロピーを合わせたエントロピーを考え、これは減少しないというのがブラックホール熱力学の一般化された第二法則という。

 

一方で量子情報理論を用いて、情報に対して定義されるシャノンエントロピーを熱力学エントロピーと同一視することによって次のような一般化された第二法則が得られる。

\lt\Delta F\gt -\lt W \gt \leq k_B T I

[1202.0983] Second Law-Like Inequalities with Quantum Relative Entropy: An Introduction

[0710.0956v3] Second Law of Thermodynamics with Discrete Quantum Feedback Control

メモリまで含めたカルノーサイクルを考える。等温過程を考えて温度を$T$とする。系の自由エネルギーの変化が$\Delta F$で、系に対して外界がした仕事が$W$である。$I$は測定によって得られた情報をメモリに記憶した際の相互情報量である。

 

相互情報量は、シャノンエントロピーを$H()$とかき、測定される系を$S$、メモリを${M}$とかくと

I(S,M)=H(S)+H(M)-H(S \cup M)

とかける。$H(S)$はフォンノイマンエントロピーに相当する。$I$は概ねメモリまで含めたエントロピー変化と思っておけばよい。ここで

0\leq I(S,M)\leq H(M)

 を満たす。左の等号が成り立つときは測定で情報をまったく得られていないときで、右の等号は測定が古典的でエラーが存在しない時を表している。

 

以上のようにブラックホール熱力学の一般化された熱力学第二法則と量子情報論の一般化された熱力学第二法則は別物である。